Jr. ページ6
｢す、げ…！｣
初めてのレッスン日。事前に聞いた話によると上手い人は前列に進める実力制度らしく。当然のようにJr歴の長い先輩達が前で踊っていた。
｢一人ずつ名前言ってってくれる？｣
という先生の言葉に、先生に近い順で自己紹介。と言っても数人なのですぐにやってくる。
｢大神Aです、よろしくお願いします｣
｢…OK、次｣
｢渡辺翔太です、お願いします｣
｢はい、よろしくね｣
名前を確認し終えた先生は早速、と言ってオレたちを最後列に並ばせた。もう練習を開始するらしい。出来具合によっては先輩グループのバック、Jrコンサートのメインに入っていけるらしく、これはやる気が上がってくる。
初日だから多少は見てもらえるかもしれないが、厳しい先生だろうから期待はできない。自分で魅せていかなければいけない。でも、なのに、よりによって隣には7番__渡辺がいた。
見てほしいと思えば思うほど、
でも隣には渡辺がいる。お気に入りの奴。オーディションの時と一緒だ。また盗られる。何をしたら目を向けられる。どうしよう。また技を。いやそんな場じゃない。
一種のトラウマだった。
自分だって出来てるはずなのに、隣が目立つんだ。まるで、自分が透明人間にでもなった気分。
楽しみだったはずのレッスンは気が付けば休憩時間へと進んでいた。追い込み練習をしている人達が流す曲に、自然と体は動き始めるから体はしっかりと身に染みているらしい。
溜まったストレスを吐き出すようにため息を大きく出す。
｢お疲れ様、やっぱり最初だから疲れちゃった？｣
｢ぇ、お疲れ様です……えっ、と｣
｢ああごめんごめん、俺は阿部亮平。んでこっちが｣
｢深澤辰哉ね。辰哉くんって呼んでよ｣
｢阿部くんと深澤くん、ですね。大神Aです。｣
早速無視するじゃん、と笑ってくれる深澤くんと阿部くんに優しい人だと察する。ダンス上手いからびっくりしちゃった、と話す二人になんだか安心した。それは恐らく透明人間になった自分を取り戻してくれたから。
｢…オレ、口下手なんです。だから時々で良いので話しかけてくれませんか｣
折角オレの所に来てくれた二人を逃したくなかった。もしここで逃してしまったら、また渡辺に取られる気がしたから。
二人は顔を見合わせて、勿論と笑ってくれた。
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作者名：日記予定表 | 作成日時：2024年3月30日 4時
